MDN 翻訳コミュニティミートアップ・10 回目開催を迎えて

実は、WebDINO Japan のコミュニティ・スペースでは毎月、MDN 翻訳コミュニティ のオフラインミートアップが開催されています。今年の 2 月に始まったこの活動は、11 月の開催で 10 回目を迎えました。

今日は「そもそも MDN って何?」という状態の方も多いかと思いますので、これを機に、改めて活動の紹介をしたいと思います!

MDNって何?

MDN Web Docs とは、世界中のコミュニティの貢献によって運営されるウェブ開発者向けのオープンソースドキュメントが集まるサイトです。2005 年に Mozilla Developer Center という名前で Mozilla 製品に関するニュースを扱うサイトとして誕生し、その後、ウェブ開発者向け技術ドキュメントサイトとして「Mozilla Developer Network (MDN)」の名で知られるようになりました。

現在では「MDN Web Docs」を正式名称とし、Mozilla の製品や技術に限らず、ウェブ技術全般に関する数多くのリファレンスやチュートリアルが集積する世界最大のプラットフォームとなっています。

さらに、2017 年 10 月には、Microsoft、Google、Samsung、W3C など各社が協力して MDN Web Docs を盛り上げていくことをそれぞれ 発表しました。これにより、リファレンスを探す際に複数のサイトを行き来する必要がなくなり、クロスブラウザ開発をする際の煩雑さも大きく解消されました。

日本での MDN の活動

こうしてベンダー横断のドキュメントサイトになった MDN 。これを機に、2018 年にはドキュメントに関するオープンソースコミュニティの活動が多く見られました。その一端を担っていたのが、MDN 翻訳コミュニティです。MDN 上のドキュメントの多くは始め英語で書かれるものが多く、そこから多国語に翻訳されていきます。MDN にある役立つ情報を、言語の壁を超えて多くの人に使ってもらいたいという想いから、ボランティアベースでの翻訳活動が全世界的に行われています。

想いを持った個人は日本にもいます。今年の 2 月からはこうした活動をより活性化するため、定期的なオフラインミーティングを開催することになりました。WebDINO Japan スタッフが音頭を取り、昔から活発に翻訳をしていたメンバーはもちろん、初めてドキュメントの翻訳をする参加者まで、幅広い参加者がコミュニティ・スペースに集まりました。

以来、月に一度のペースで MDN 翻訳コミュニティのオフラインミートアップが開催されています。毎回 10 人前後の参加者が集まり、空間を共有し、お菓子を食べながら翻訳作業に没頭しています。欠かさず参加するコミュニティメンバー、数回に一度現れるメンバー、お試しで初参加するメンバーなど、毎回多様性に富んだグループで翻訳しています。また東京の会場に直接登場するのが難しいメンバーが、地方からビデオ通話を介して参加することも少なくありません。

作業の場を共有する

ミートアップでは議論やミーティングなどはなるべくせず、集まっている時間の大半を実際の翻訳作業に使っています。また翻訳の時間をたっぷりと取れるよう、土曜日の午後をまるごと使うスケジュールで開催しています。ボランティアベースのオープンソース活動は、どうしても普段は片手間になってしまいがちです。そのため、せめてこうしてコミュニティで集まっている時だけは作業に集中できるようにという想いから、こうした設計にしています。余白のあるスケジュールによって、記事を最後まで丁寧に翻訳したり、慣れている人は複数の記事を翻訳完了したりすることが可能になります。

またミートアップでは、初心者の方も歓迎しています。「チューター」という役割を持った経験多い参加者が、ウェブドキュメント翻訳の基礎や MDN 翻訳ツールの使いかたなどの導入を手伝ってくれます。 また MDN への貢献の仕方は英語力が必要な翻訳作業ばかりではありません。翻訳が完了したドキュメントの日本語校正や、技術的に間違っていないかのレビューなど、各自の得意に合わせた参加の仕方が可能です。翻訳のスキルに磨きをかけたい人、翻訳に関するコミュニティを探している人、Mozilla や OSS のコミュニティ活動によりアクティブに参加してみたい人、新しいウェブ技術やウェブ標準に興味がある人等、多くの方におすすめのコミュニティです。

静かでゆったりと作業できる空間に、同じ目的を持ったメンバーが集まることで、そこには安心感のある安全な場が出現します。人見知りの参加者が多いこともあり、メンバー間の直接的なコミュニケーションは休憩中や解散間際の僅かな時間にしか発生しません。(翻訳に関する質問や相談、事務連絡のほとんどはコミュニティの Slack 上で活発に行われています。) それでも、不思議とメンバーの間にぎこちなさが生じることはありません。直接言葉を交わさずとも、GitHub 上で翻訳した記事を誰かにレビューしてもらったり、お互いの貢献を緩やかに把握たりと、「Give」の精神に基づいた様々なコミュニケーションが交わされています。こうして多くの時間を一緒に過ごす中で、一種の信頼関係が醸成されていきます。

今後を見据えて

MDN のユーザー数は 2017 年 10 月時点で、月間 600 万人とのこと。その数は年々凄まじい勢いで成長しています。この勢いにブレーキをかけることなく、今後もますますドキュメントを充実させ、コミュニティをさらに盛り上げていきたいと思います。また翻訳だけでなく、他のコミュニティとのコラボレーションも視野に入れて、オープンソース界全体を盛り上げてけたらなと思っています。

【参考リンク集】